告白の時間
卒業式を終えた校内…居残る生徒の姿はなく、廊下は静まり返っていた。

「私…花園が好きだよ」

ブラスバンドの後輩達に挨拶を済ませた帰り…立ち止まって千歳が思いを告げると、花園がゆっくりとした動作で千歳をふり返った。

その表情は、いつもの人懐っこい笑顔が浮かんでいる。

「ありがとう千歳…オレも千歳が好きだよ。高校行ってもまたブラバンでよろしくね!」

花園は満面の笑みで、千歳の告白を3千キロメートルほど後ろに受け流した。

「…」

二の句が告げるわけもなく千歳が立ち尽くしていると、前方から花園のファンクラブの後輩5、6人が待ちくたびれたと言わんばかりに走って来た。

「せんぱ〜い、早く来て下さいよ〜みんな先ぱいのボタンねらってるんですから〜」

女生徒に囲まれた花園は腕を引っ張られると、そのまま玄関へと行ってしまった。

けたたましい女生徒が過ぎ去た後の廊下は、耳鳴りがするほどシーンとなり…呆然と立ち尽くす千歳の背後から一人の人物が現れると声をかけた。

「…千歳、アイツ殺っちゃっていいか?」

廊下の陰で一部始終を見ていた桂木が、ドスのきいた声で尋ねた。

「うん…」

「こう言っちゃなんだが、あの魔性の男はとっとと忘れた方が千歳のためだと思う…」

「私もそう思う…」
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