元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
「会社でまたその好ましい子と再会した時には、これはもう神様からのメッセージだと思った。何となく好ましいって気持ちとちゃんと向き合えっていうことと、今までの修行の成果を見せろっていうこと」

「修行……」

「どう?」

「どうもこうも……。免許皆伝? 見事にやられたもの」

「あははっ、そっか」

出海君は嬉しそうに笑った。

「楽器、起きた?」

「まだ寝てる。でも、弾いてみる?」

「ちょっと待って、手、洗ってくる」

私が慌てて洗面所へ向かうと、後ろから声がかかった。

「希奈さんのそういうところ、好き」

「出海君のそういうところ、修行の成果がよく出てる」

またも笑う出海君。

私は決意をこめて手を洗う。



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