元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
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次に出海君と顔を合わせたのが、大学生の時。
私は大学のオーケストラに入って、青春を謳歌していた。
2年生になって、入学式の日。式典で演奏した後、会場である大学会館から学部棟へ向かう新入生の波に向かって、サークルの勧誘活動をしていた。
「オーケストラやりませんか〜?」
声をかけながらビラを配っていると。
「やりますのでビラください」
頭の上から男性の声が降ってきた。
おお、なんて素直な新入生!
営業スマイルを浮かべて見上げると。
おっとりして優しそうなイケメンが私を見下ろしていて。
「失礼ですが、藍沢希奈さんですよね?」
……。
…………。
………………あ。
「佐々木出海です」
優しそうな雰囲気は変わらない。
顔立ちもきれいなまま、美少年から美青年に。
ただ、当たり前だけど背はかなり高くなっていて。
その細身の身体にまとうスーツは明らかに他の新入生と違った高級感。
……相変わらずの王子ぶりに、私は出海君の顔を直視できずに目線を少し下に逸らした。
あ、ヴァイオリン痣。
左顎の奥に、痣がある。
ヴァイオリン続けてるんだ。
「お久しぶりです。……僕のこと、覚えていらっしゃいますか?」
小学生の時とは違って低くなって、でも、まろやかな声と、丁寧な口調。
王子ぶりは、相変わらずどころか、むしろ増している。