元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
*
電車から降り、重い足取りでエスカレーターに乗る。
それまで自動車通勤をしていた私にとって、電車通勤というのは予想以上に体力を奪われるものだった。
駅の駐車場から駅まで歩いて、さらに改札からホームまで歩く。
電車に乗っているだけでも揺れに対処するため筋肉を使う。
さらにホームから会社へ歩く。
玄関から車、車から会社、歩くの何歩?という生活を送っていた私は、まず疲れと戦うことになった。
それから時間。
通勤時間が20分から、1時間強へ、約3倍に増えた。
平日は帰りも遅いし疲れてるし、楽器を弾ける状況じゃない。
土日でカバーするしかないか……。
でも土曜には古巣の会社にヘルプに入ることもある。
それがなくても正直疲れてるし、たまった家事をしたら後はダラダラしてしまう。
はぁ。時間も体力も足りない。
どうしたらいいんだろう。
ため息をつきながら勤務先ビルのエントランスに入り、エレベーターに乗りこんだ。
会社フロアは、今日は電気が点いていない。私が一番乗りだ。
さて。気持ちを切り替えて頑張ろう。
今は2月。誰もいない会社は寒い。
暖房のスイッチを入れ、ブラインドを上げていると、ドアが開き、
「おはようございます」
と誰か入ってきた。
って、出海君、じゃなかった、常務。
手を止め、頭を下げる。
「おはようございます」
「今日も早いですね」
「……あ、はい」
「早出届は出していますか?」
……まずい。
……出してません。
私が気まずくて黙っていると、彼は眉をひそめた。
「昨日も出していませんでしたよね? コンプライアンス的に問題ですよ?」
……ヒラ社員の早出届をチェックするより他にもっと大きな仕事があるでしょうに。
「……申し訳ありません」
「では、少しの間、僕の朝ご飯に付き合ってください。その間にフロアも暖まるでしょう」
電車から降り、重い足取りでエスカレーターに乗る。
それまで自動車通勤をしていた私にとって、電車通勤というのは予想以上に体力を奪われるものだった。
駅の駐車場から駅まで歩いて、さらに改札からホームまで歩く。
電車に乗っているだけでも揺れに対処するため筋肉を使う。
さらにホームから会社へ歩く。
玄関から車、車から会社、歩くの何歩?という生活を送っていた私は、まず疲れと戦うことになった。
それから時間。
通勤時間が20分から、1時間強へ、約3倍に増えた。
平日は帰りも遅いし疲れてるし、楽器を弾ける状況じゃない。
土日でカバーするしかないか……。
でも土曜には古巣の会社にヘルプに入ることもある。
それがなくても正直疲れてるし、たまった家事をしたら後はダラダラしてしまう。
はぁ。時間も体力も足りない。
どうしたらいいんだろう。
ため息をつきながら勤務先ビルのエントランスに入り、エレベーターに乗りこんだ。
会社フロアは、今日は電気が点いていない。私が一番乗りだ。
さて。気持ちを切り替えて頑張ろう。
今は2月。誰もいない会社は寒い。
暖房のスイッチを入れ、ブラインドを上げていると、ドアが開き、
「おはようございます」
と誰か入ってきた。
って、出海君、じゃなかった、常務。
手を止め、頭を下げる。
「おはようございます」
「今日も早いですね」
「……あ、はい」
「早出届は出していますか?」
……まずい。
……出してません。
私が気まずくて黙っていると、彼は眉をひそめた。
「昨日も出していませんでしたよね? コンプライアンス的に問題ですよ?」
……ヒラ社員の早出届をチェックするより他にもっと大きな仕事があるでしょうに。
「……申し訳ありません」
「では、少しの間、僕の朝ご飯に付き合ってください。その間にフロアも暖まるでしょう」