元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
「そうそう。同じマンションに、黒川ミシェルが住んでいます」

「っ‼︎⁉︎」

黒川ミシェルは、日仏ハーフのイケメン天才ピアニスト!
大学時代からの大ファンなのだ!
もしかしたら会えるかもしれないなんて!

「いかがですか?」

彼は王子スマイルで手を差しだしてきた。

一気に高くなったテンションのまま、思わずその手を握ってしまった。

握ってから、あ、しまった、と思う。

温かくて大きくて硬い男の人の手の感触に、かなり、ドキっとしたからだ。

彼の澄ました笑顔が少し崩れて、一瞬かわいい男の子に見えたし。

……あれ。まずくない、これ?

「交渉成立ですね」

そうそう。これは取引だ。色っぽい要素などこれっぽっちもない。入れちゃいけない。
相手は常務。御曹司。
うん。

私は手を離し、立ち上がって、頭を下げた。

「よろしくお願いします」




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