元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
2

仕事ができる人は、決断が早く、行動が速い。
面倒だったりややこしかったりする“壁”を壊す労力を厭わない。

常務が、若いけれど社員から一目置かれているのはそういうところだと、短い間で感じていたけれど。

プライベートでも同様らしい。



「食物アレルギーはありません。食べられないほど苦手な食べ物もありません。朝食はできればご飯と味噌汁が有難いです」

運転席の常務が言う。

話が出たその週末、日曜日の午後。
約束の時間きっちりに、到着を知らせる電話がかかってきて。
私のマンションの玄関先に姿を現した出海君、いや、常務の品もセンスも良い私服を見て、懐かしいな、と感じたのも束の間。
仕事ができる男になった彼の手によって私の荷物はテキパキと彼の車に運ばれ。
現在、一緒に都内のマンションに向かっている最中なのである。

あまりのスピードに現実感がなかったけれど、車の中でも淡々と打ち合わせを進めていくので、プライベートというより業務のような気がしてきた。
甘さなし。
うん。これはこれで好都合だな。

なお、彼の車は国産のグレードが高いワゴン。
外も中もキレイだ。よく手入れしているらしい。キレイ好きだとしたら、部屋はちゃんと掃除しないといけないな。
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