元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
ラグジュアリー感あふれる高層マンションの一室。
広い玄関に入ると、ふわっと、かすかに、清潔な香りがした。ルームフレグランスか、柔軟剤の香りかな。
「希奈さんの部屋はこちらです」
彼が、入ってすぐの扉を開ける。
広い部屋にベッドとチェスト。
クローゼットの扉は開け放たれている。
「ゲストルームですので、お好きなようにお使いください。練習用に椅子や鏡が必要であれば買いに行きましょう」
「いえ、結構です」
どうせ2ヶ月しかいないのだ。勿体ない。
部屋にスーツケースとボストンバッグとヴァイオリンケースを置くと、家の中を案内された。
広いシステムキッチン。
炊飯器にオーブンレンジにトースターに電気ケトル。調理家電は揃っている。
テーブルに椅子二脚のシンプルなダイニング。
リビングには、テレビとオーディオセット。
目を惹かれたのは、壁の飾り。ベージュと茶色の小さな六角形がいくつも連なったおしゃれなオブジェ。服だけじゃなく部屋まで品もセンスもいいんだなぁ。
次に目が行ったのは、棚にずらりと並べられている大量のクラシックのCDと、交響曲や協奏曲のスコア。