元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
「こっちが僕の書斎で、こっちが寝室です。
……希奈さん?」
私がコレクションに見入っていると、彼が戻ってきた。
「……今でもクラシック聴いてるんですね」
「唯一の趣味ですね。僕がいない時でも好きに聴いていただいて構いませんよ」
彼はそう言って、操作の仕方を教えてくれた。
私がリモコンの再生ボタンを押すと、ベートーヴェンの『エロイカ』が流れ出した。
おお! いい音!
「ここのソファに座ってみてください」
長いソファの真ん中に大人しく座ると。
わあ!!!
「どうですか?」
彼が得意げに瞳を輝かせている。
あはは。お気に入りのおもちゃを自慢する子どもみたい。
ならばヒラ社員としてはヨイショしましょう。
「すごい! 音に包まれてるみたいです!」
「そうでしょう?」
でも、音はどこから……?
確実に横や後ろから聴こえる気がするのだけど……?
ぐるりと周りを見回しても、スピーカーらしきものは見当たらない。
今時のは超小型とか?
「壁です」
彼が壁を指差している。
「あれがスピーカーなんです」
えっ。あの壁に飾られた六角形のオブジェが?
「説明し始めるとマニアックで引かれると思うので自粛します」
……ありがたいです。
そのお心遣いに感謝して、持ち上げさせていただきます。
「センスいいスピーカーですね。音も本当にホールで聴いてるみたいですし!」
「よかった。こだわって奮発した甲斐があります」
よし。雑談から培われる円滑な人間関係は仕事において重要だ。
それにしても御曹司かつ会社役員の奮発ってどれほどなんだろう。
ちょっと怖い。
……希奈さん?」
私がコレクションに見入っていると、彼が戻ってきた。
「……今でもクラシック聴いてるんですね」
「唯一の趣味ですね。僕がいない時でも好きに聴いていただいて構いませんよ」
彼はそう言って、操作の仕方を教えてくれた。
私がリモコンの再生ボタンを押すと、ベートーヴェンの『エロイカ』が流れ出した。
おお! いい音!
「ここのソファに座ってみてください」
長いソファの真ん中に大人しく座ると。
わあ!!!
「どうですか?」
彼が得意げに瞳を輝かせている。
あはは。お気に入りのおもちゃを自慢する子どもみたい。
ならばヒラ社員としてはヨイショしましょう。
「すごい! 音に包まれてるみたいです!」
「そうでしょう?」
でも、音はどこから……?
確実に横や後ろから聴こえる気がするのだけど……?
ぐるりと周りを見回しても、スピーカーらしきものは見当たらない。
今時のは超小型とか?
「壁です」
彼が壁を指差している。
「あれがスピーカーなんです」
えっ。あの壁に飾られた六角形のオブジェが?
「説明し始めるとマニアックで引かれると思うので自粛します」
……ありがたいです。
そのお心遣いに感謝して、持ち上げさせていただきます。
「センスいいスピーカーですね。音も本当にホールで聴いてるみたいですし!」
「よかった。こだわって奮発した甲斐があります」
よし。雑談から培われる円滑な人間関係は仕事において重要だ。
それにしても御曹司かつ会社役員の奮発ってどれほどなんだろう。
ちょっと怖い。