元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました

で、机の向こうで王子スマイルを浮かべている、わがホールディングスの常務。大手食品会社社長の御曹司。
佐々木出海(いずみ)氏。

なんというか……、

知り合い。

大学の時に、同じサークルだった。

首都圏にある大学のオーケストラ。
しかも、同じヴァイオリン。

といっても、人数が多いヴァイオリンパート。さらに学年が違ったから、親しかったわけではない。

なにしろ、彼が御曹司だというのは周知の事実だった。
元々容姿は申し分ない。
立ち居振る舞いもノーブル。
かといって気取った性格ではなく、誰とでも分け隔てなく接する。
それに加えて幼い頃からヴァイオリンを習っていて、弾く姿も美しかった。
ゆえに、ついたあだ名は『ヴァイオリン王子』。
男子にも女子にも人気者で、いつも誰かに囲まれていた印象がある。

私ごときが近づける人ではなかったし、近づこうとも思わなかった。

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