元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
「希奈さんはそのまま休んでいてください。疲れたでしょう? 今お茶を淹れます」

私は慌てて立ち上がった。

「常務にそんなことさせられません! 私がやります!」

彼は苦笑いを浮かべた。

「家で常務と呼ばれるのはちょっと」

……では、なんとお呼びすれば?

「佐々木さん?」

「大学時代と同じで構いませんよ」

「い、出海君……?」

「はい、希奈さん」

出海君はそう答えながら、くしゃっと笑った。

…………うわ。

不意打ちだった。

私は慌ててキッチンへと向かう。

「お茶、淹れます!」

これ、業務。
いま、業務中。

赤面している場合ではない。



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