元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました

私が黙ったままでいると、彼が口を開いた。

「市民オケで三神君がメンコン弾くというので聴きに行きました。そこで希奈さんの名前を見つけて、社会人になっても楽器続けてるってすごいと思っていたんです。まさかこんな形で再会できるとは思いませんでしたけど」

お互いさまです。
私もあなたがこの若さで常務になるなんて、すごいと思いましたよ。
そしてまさかまさか、同じフロアで仕事することになるとはね。


私は大学卒業後も同じ市内に残り、現在そこの市民オーケストラでヴァイオリンを弾いている。

三神君というのは、私と社長がいた大学オケの後輩。セミプロレベルにヴァイオリンが上手くて、前回の市民オケ演奏会でメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(コンチェルト、略してメンコン)のソリストを務めた。
この演奏会はFacebookの大学オケOBグループでも宣伝されていたらしいから、情報が回ったのだろう。
演奏会のパンフレットでは出演者全員の名簿が記載されるから、そこで私の名前を見つけたというわけか。

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