元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
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私の所属部署は広報部。
名前は華やかでも、私の仕事はWebサイト管理やプレスリリースに伴う事務作業や社内報制作など、地味。地味でいいのだ、田舎者だから。
定時退社時刻まであと5分というところで、部長が外出先から戻ってきた。
ニコニコしながら私の横に立つ。
「藍沢さん」
嫌な予感。
この部長は親会社から来たおじさん。
頭の回転は速いし着眼点も面白いし実行力もある。いわゆるデキる男だ。が、それゆえに部下に結構な無茶振りをしてくる。しかもそれを自覚している時ほど笑顔だ。
「悪いんだけどね」
うわー、何だろう。
身構えたその時。
「石川さん」
部長の名前が呼ばれた。
声のした方を見ると、
……常務。
「すみませんが少しよろしいですか」
石川部長はサラリーマンの鑑、「はいっ」と短く返事をして、若造役員の元へ早足で向かっていった。
常務は私をチラリと見やってから、部長と話し始めた。
……気を回してくれた、というのは自惚れか。
定時退社時刻きっかりにPCをシャットダウンする。
「すみません、今日は用事があるので先に帰りますね」
向かいの席に座る、たったひとりの同僚・大村さんに声をかける。グループ企業の中でも老舗からやってきた、アラフォーの物静かな男性だ。外部との華やかな仕事は彼の担当。
「お疲れ様」
「明日朝早く出社しますので、部長の無茶振りが来たら、メール入れておいてください」
「了解」