元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
食事の後片付けをしてから自室に戻り、ヴァイオリンケースに入れてある定演のチケットを取り出す。
頭の中で料金を計算する。
誘ってくれたヨーロッパオケのチケットの約40分の1。
どれだけ格差があるんだ。
こんなの、さっきの話の後で渡せないじゃない。
ため息をつきながら元に戻して、本来の自分の家への帰り支度を始めた。
「じゃあ、出かけますね。日曜日の夕方には戻ります」
私がヴァイオリンケースを背負って、自分の洗濯物を詰め込んだバッグを持って、リビングの出海君に声をかけると、彼はいつも玄関まで送ってくれる。
とても幸せを感じる瞬間だ。
「行ってらっしゃい。気をつけて。ゆっくり休んでくださいね」
王子スマイルに見送られ、部屋を出る。
廊下を歩き出すと、向こうから若い男性が歩いてきて、隣の部屋の前で立ち止まった。
お隣さん?と思いながら会釈して通り過ぎようとすると、こちらを見てる。
東洋人と西洋人のハーフであろう男性。
整った顔立ち。
漂うオーラは、どこか『特別』な印象。
……あれ?
……似てるけど、まさかね?