元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
袖から登場した指揮者を拍手で迎える。
出海君が拍手する姿はとても綺麗で、王子様は何をやってもすごいなぁ、なんて思う。
一曲目は、現代日本を代表する作曲家、百目鬼(どうめき)ライの作品。
名前は知ってるけど、曲は難解な印象があるのでちゃんと聴いたことはない。
案の定、捉えどころのないメロディとリズムとハーモニー。
だけど、響きの豊かさと、各楽器の名人芸に聴き惚れて、“よくわからないけどすごい”とうっとりしている間に終わってしまった。
とっつきにくい曲を“いい曲かも”と思わせてくれるとは、さすが世界トップクラスの指揮者とオーケストラ。
二曲目、いよいよ黒川ミシェルが登場する。
ラフマニノフ作曲『パガニーニの主題による狂詩曲』。ピアノとオーケストラによる、いわゆるピアノ協奏曲のような形式。パガニーニが独奏ヴァイオリンのために作曲したカプリース第24番の主題を次々と変奏させていく。ラフマニノフ好きというわけではない私でも、ヴァイオリン弾きとして押さえてある。
出海君のマンションで一度だけ遭遇した黒川ミシェルの、人間としての印象はそれほどよいものではなかったので、割と醒めていたんだけど。