元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
程なく運ばれてきたラーメン。
これがまたそこはかとなく上品。
麺は細め。
スープは化学調味料無添加だそうで、あっさりヘルシー。
麺の上には、大きなチャーシュー、半熟玉子、ネギ、メンマなどが、美しく盛り付けられている。しかもそれぞれこだわりの食材と調理法だそうで、どれも美味しい。
お箸は、吉野のヒノキの間伐材から作られた割り箸だそうで、これまた高級感を演出している。
食べながら、まいったなぁ、と心の中でつぶやく。
ラーメンでさえ上品ときた。
嫌な感じじゃなくて、やられた、って笑っちゃう。
お互いほぼ無言でラーメンを食べ終えると、出海君が切り出した。
「黒川ミシェルの演奏聴くたびに天才だと思うんだけど、今日も予想を上回るパフォーマンスで、負けた、って感じだな」
「前に若いピアニストでこの曲聴いた時はピアノがオケに潰されてたから、今回ピアノがちゃんと耳に届いて驚きました。オケがちゃんとピアノに配慮したのかなって、ブラームスの音量聴いて感じたんですけど」
「ああ、それは僕も思った。指揮者もオケも黒川を認めた上でコントロールしてるな、って。演奏後にあのオケから拍手もらっているのを見るとファンとしてほっとしたな」
「わかります!」
「ただ、第18変奏はもうちょっとロマンチックな方が好みだった」
「え、私はあのくらいがいいです」
「へぇ。じゃあ、ブラ4の4楽章の泣きのメロディは? 今日のは割とコッテリめだったと思うけど」
「あれはもっとコッテリでいいです。むしろどれだけコッテリでも構いません」
「あはは、面白いなぁ、希奈さん。でもあそこ、コッテリ行きたいヴァイオリンとアッサリ行きたい低弦とで引っ張りあって、むしろスリリングだった」
「確かに弦の各パートの主張が強かったですね。特にセカンドヴァイオリンがあそこまで聴こえるブラームスに初めて出会いました。新しい発見がいくつもあって、内声は大事だなってすごく勉強になりました」
「同感」
音楽の感想を言い合うのは、相手によっては危険なことだ。自分の感覚が絶対で、違う意見を受け入れない人や否定する人もいるから。
でも出海君は予想通りそういうことはしない人だったし、受け入れて面白がってくれた。
話していて、気持ちいいし、楽しかった。
これがまたそこはかとなく上品。
麺は細め。
スープは化学調味料無添加だそうで、あっさりヘルシー。
麺の上には、大きなチャーシュー、半熟玉子、ネギ、メンマなどが、美しく盛り付けられている。しかもそれぞれこだわりの食材と調理法だそうで、どれも美味しい。
お箸は、吉野のヒノキの間伐材から作られた割り箸だそうで、これまた高級感を演出している。
食べながら、まいったなぁ、と心の中でつぶやく。
ラーメンでさえ上品ときた。
嫌な感じじゃなくて、やられた、って笑っちゃう。
お互いほぼ無言でラーメンを食べ終えると、出海君が切り出した。
「黒川ミシェルの演奏聴くたびに天才だと思うんだけど、今日も予想を上回るパフォーマンスで、負けた、って感じだな」
「前に若いピアニストでこの曲聴いた時はピアノがオケに潰されてたから、今回ピアノがちゃんと耳に届いて驚きました。オケがちゃんとピアノに配慮したのかなって、ブラームスの音量聴いて感じたんですけど」
「ああ、それは僕も思った。指揮者もオケも黒川を認めた上でコントロールしてるな、って。演奏後にあのオケから拍手もらっているのを見るとファンとしてほっとしたな」
「わかります!」
「ただ、第18変奏はもうちょっとロマンチックな方が好みだった」
「え、私はあのくらいがいいです」
「へぇ。じゃあ、ブラ4の4楽章の泣きのメロディは? 今日のは割とコッテリめだったと思うけど」
「あれはもっとコッテリでいいです。むしろどれだけコッテリでも構いません」
「あはは、面白いなぁ、希奈さん。でもあそこ、コッテリ行きたいヴァイオリンとアッサリ行きたい低弦とで引っ張りあって、むしろスリリングだった」
「確かに弦の各パートの主張が強かったですね。特にセカンドヴァイオリンがあそこまで聴こえるブラームスに初めて出会いました。新しい発見がいくつもあって、内声は大事だなってすごく勉強になりました」
「同感」
音楽の感想を言い合うのは、相手によっては危険なことだ。自分の感覚が絶対で、違う意見を受け入れない人や否定する人もいるから。
でも出海君は予想通りそういうことはしない人だったし、受け入れて面白がってくれた。
話していて、気持ちいいし、楽しかった。