元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
タクシーに乗り、出海君のマンションで降りる。
エレベーターに乗り、出海君の部屋へ向かう。
思えば2人で一緒に帰ってくるのは初めて。
タクシーでもエントランスでもエレベーターでも、出海君のエスコート、というのか、レディファースト、というのか、そういう仕草は洗練されていて、心はドキドキしつつグラグラ揺れた。
懐かしい、出海君の家に入る。
「ただいま」
「お邪魔します」
「希奈さんの部屋、そのままにしてあるのでどうぞ」
「ありがとうございます」
「朝ごはんは作らなくてもいいように買ってあります。パンですけど」
「ありがとうございます」
「先にバスルーム使います?」
「いえ、お先にどうぞ」
「ありがとう」
形式的な会話を交わした後、それぞれの部屋に入る。
着替えてから、出海君がお風呂に入っている間に掃除でもしようかとリビングやキッチンを見回ってみたけど、キレイで手を加えるところがない。ハウスクリーニング入れたのかな。
仕方なく部屋に戻り、シャワーの準備をしながら、揺れる心と向き合うことにした。