元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
反応なし。
起きないと、大胆なことしちゃえ、と思ってきちゃうよ?

「今だって、無防備にそんな色っぽい寝顔晒してると……、

キスされても、文句言えないんだからね」

私は手を伸ばし、出海君の柔らかな前髪をかき上げる。

初めて触る、出海君の髪の毛。
初めて感じる、出海君の体温。

心臓が痛いくらい、ぎゅーっとなる。


好きって気持ちは、募るもので。
募って、溢れるもので。
溢れて、理性を壊すってこと、
王子様はご存知?


ゆっくり顔を近づけ、

そっと額に口づける。

温かさを一拍分しっかり胸に刻んだ後、身体を離した。




–––––––次の瞬間。


私の身体は、何かに動かされ、何かにぶつかって、何かに包まれて、
私の視界は、壁に飾られている六角形のオブジェ風スピーカーを映していた。


「文句言わせてもらっていい?」


耳元で囁かれた声に我に返る。

抱きしめられている!!!

ソファに座った出海君が、私の背中に手を回していて、私の顔は彼の肩に乗ってるんだ。

「ごめんなさいっ、あの、」

「どうせなら額じゃなくて唇がよかった」


……甘い声で囁かれ、全身が震えた。

彼の行動と言葉が意味することに、
身体中の血が沸騰しそう。
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