華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~

「違う、そうじゃない。ちゃんと話を聞いてくれ。俺は――……」

「やめて、触らないで!」

王子は私の手を強く握ろうとする。
咄嗟にその手を払う。

しかしその勢いで、私の爪が王子の頬に引っかかり、傷を作った。


「あ……」

流れるような線を描いた傷が赤く色づく。

けれど王子はその傷など気にもせず、ただ私を呆然と見ているだけだった。

悲し気な表情は変わらない。
今にも泣き出してしまうのではないかと思うような、酷く歪んだ顔。

胸が締めつけられる思いに駆られた。


なぜ王子がそんな表情をするの?

苦しいのは私なのに。
悲しいのは私なのに。

どうして、どうして……。


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