華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
そんな重い空気を打ち消すように、部屋の扉が叩かれる。
「申し上げます。診察が終わり、部屋に入ってもよいとのことです」
「――分かった、今行こう」
そう言った王子は、いつもの表情に戻っていた。
私も気を取り直し、ナディの部屋へと向かう。
「ああ、ランスロット様」
「ご苦労。で、ナディの容態は」
「少し頭を打っておりますが、命に支障はございません。落ちたショックで気を失っているだけでしょう、じきに目が覚めるかと。骨が折れている形跡もありませんし、傷は治療を施しておりますので、問題ないかと」
「そうか、ありがとう」
医者の言葉に、ホッと胸をなで下ろす。
命の危険はない。
この報告がどれだけ嬉しいものか。
私はナディの元へ駆け寄った。
ナディはすやすやと寝ているように見えた。
痛む部分を治療してもらい、意識はなくとも楽になったのではないかと思う。
「ナディ……、ごめんなさい」
ぽつりと漏らす。
王子は医者と部屋にいた騎士を連れて部屋を出た。
きっと気を利かせ、私とナディをふたりきりにしてくれたのだろう。
ナディの手を握り、祈りを込めた。
命の心配はないとはいえ、やはり意識が戻るまでは不安は拭えない。
どうか、目を覚まして。
そんな願いを込め、祈る。
やがてナディの口から、ううん、と小さな声が漏れた。
その声に反応し、顔を上げナディを見る。