華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
王子は私をエスコートしながら、城の中庭へと案内する。
さすが資源の豊富な国だけあって、細かな所までしっかりとお金が掛けられているのがよく分かる。
統一の背に刈り取られた芝生に、真ん中にある花壇には計算されて植えられた色とりどりの花達。
どの場所からでも美しく見えるように手入れをされていて、見た瞬間、思わずため息が零れた。
「美しいだろう?ここはエントランスからも、大広間からも見える場所だ。城に来る客たちが少しでも楽しんでくれればと、より力を入れている場所だ」
「素晴らしいわ……。うちの城の庭は荒れに荒れ放題だったから。あのバ……いえ、父がそんなところにお金を費やすのは無駄だ、と言ってなにもしなかった。せいぜい城の中に侵入しそうな蔦を刈り取る程度で、後は伸び放題の残念な庭だったわ」
ここの庭とは天と地の差があるくらい酷いもので、草木が伸びすぎて、容易に入ってはいけないような場所と化していた。
人を歓迎する心のない国。
だから無くなってしまうのだと、庭を見ただけでも分かる。
「庭だけじゃない、城の中も相当荒れていた。この国の領地になって早々に城に行ってみたが、絵画や置物は埃を被り、そこら中にゴミが散らかって、王族が住むような場所ではないくらいの状態だった。君はそんな所でずっと生活していたんだな」
「行かれていたのですか?」
「ああ。ここ何日間、視察に行っていた。国は滅びようとも町はある。なるべく早く立て直さなければならないからな」