華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
だから、顔を合わせることがなかったのかと、ようやく理解した。
私の国に住んでいた者たちも、私たちの一族に統治されるより、この国に統治されるほうがいい生活ができるだろう。
国が無くなるのは仕方ない。
けれどその後どうなるのか、それが気がかりではあったから、その先を王子が考えてくれていることが、とても嬉しかった。
「ありがとうございます、王子。本来ならばやらなくてもよい仕事ですのに、私の父が愚かなためにこんなことに……」
「いや、それが私の仕事であり国の義務でもある。この国となった以上、劣悪な環境にすることはこの国の意に反する。だからなにがなんでも良くしていかなければいけないんだ」
その言葉がどれだけ心強かったか。
あの国は本当はいい所だった。
人も温かくて気候もよくて、住みやすい所だった。
けれど父が国王になってから、どんどんと住んでいた国民が逃げていって、あれだけ賑やかだった城下街も寂れて活気のない街になってしまった。
本来ならば、王女である私が立て直さなければいけないのに、立て直すどころか父すらも止めることができない無力な王女だった。
でも、この国を背負う力あるアレックス王子なら、前のような街に戻すことが可能だろう。
「それでだ、あの一帯を立て直すにあたって、私の友人でもあり右腕としても働いてくれている、ナーシュ家のフェルナンドという者に任せることにした。それに伴い、私とエリスの婚姻を解消し、エリスはフェルナンドの妻となることに決まった」
「――……え!?」