華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
「あなたこそ……」
ごくりと息を飲みながら、そうエリスに返した。
その笑みは異常なくらいに明るい。
けれど目は決して笑ってはおらず、その瞳は明らかに私に対して怒りを向けている。
それがよけいに恐怖を煽った。
「たまたま部屋に戻ろうとしたら、あなたを見かけただけですわ。それがなにか問題でも?」
「そう……。なら私はこれで」
そう言って、扉を閉めようとした。
だがエリスは呼び止めるように私にこう話す。
「ああそう。あなたにひとつ、忠告しておこうかと思いまして」
エリスはつかつかとヒールを高らかに響かせ、私の目の前へと来る。
そして、私の耳元まで唇を寄せると、こう囁いた。
「近くにいる者が味方だと思わないことです。傍にいるからこそ、憎しみもより膨れ上がる。お気をつけあそばせ、油断をしてはいけない」