華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
「――ソフィア様?」
聞き慣れた声にハッと我に返り、声のしたほうへ顔を向けると、そこにはナディと呼びに行った騎士が立っていた。
「ナディ……」
「申し訳ございません、おふたりの邪魔をしてはいけないと思い、別な仕事をしていたところでした。なにかご用事でも?」
「あ、え、えっと……。ごめんなさい、少し頼みごとをしようと思っていたのだけれど、その内容をすっかり忘れてしまったの。呼んでおいて申し訳なかったわ」
「あ、そうでしたか。ではまた思い出したらそのときにでも。仕事が途中になっておりますので、それが終わり次第、またこちらへお伺い致しますわ」
「え、ええ。分かったわナディ。忙しいのに本当にごめんなさい」
ナディはニコリと微笑み、足早に廊下を歩いていった。
エリスの話を聞いてしまったからだろうか。
特別ナディに変なところはないのに、どうしても身構えてしまう。
お陰で外に行こうとしていた気持ちも、まったく失せてしまった。