華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~

やがて、ナディがナイトドレスを持って部屋に戻ってきた。
念入りに湯浴みをし、そのドレスを身に纏う。

肌と髪には、甘い香りの漂う香油を塗り込み、軽く化粧を整える。
髪の毛はしっかりと梳かされ、香油のお陰かさらりと流れるような仕様になった。

すべての支度を終えた頃、その扉は叩かれた。

その音に、ドキリと胸が鳴る。

ナディが扉を開けると、そこには白いシャツとトラウザーズ姿の王子が立っていた。


「お待ちしておりました、王子」

「ああ。これまでの準備、礼を言うぞナディ」

ナディは、王子に向けてゆっくりと礼をした。

そしてそのまま、ナディは部屋を出ていこうと、ノブに手をかけた。


――その瞬間。



「……本当に、羨ましい」



――それは普通であれば聞き取れないほどの、小さな呟きだった。

でもたしかに私の耳には、そうハッキリと聞こえた。


ハッとしてナディを見る。


「ナディ……?」

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