華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~

ナディは背を向けたまま動かない。

異様な空気が辺りを漂う。


……よく考えたら、私の部屋の前に置かれていたという箱は、ナディが復帰してから始まったことだった。

ナディは部屋の前に置かれていた、と言った。
でも、そう言って箱を部屋に持ってきていたのは、紛れもなくナディだった。

私はその箱が実際に部屋の前に置かれているのを見ていなかった。
私が見る前に、ナディが部屋に来ていたから。

それにナディが階段から突き落とされたというのも、ナディだけの証言であって、他にその証言を裏付けるような話は聞こえてこない。


"傍にいるからこそ、憎しみもより膨れ上がる"


――私の傍に誰よりも長くいた人物。

それは王子じゃない。


私の近くにいて、私をよく知る人間、それは――……。



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