華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
――部屋の扉が叩かれる。
「失礼するわね、アレク」
そう言って入ってきたのは、エリスだった。
「ああ、エリスか」
「様子はどうなの?」
「まだ目覚める気配がない。傷が痛むのか、時折唸るような声を上げるだけだ」
エリスはベッドで眠るソフィアの傍へ行くと、優しく顔を撫でた。
「こんなことになるなら、意地悪なんてしなきゃ良かったわ」
「悪趣味なんだよ、お前は」
「だって暇だったんだもの。ちょっとからかってみようかなって。本人はなるべく冷静に対処していたつもりだったようだけど、明らかに動揺していて、……可愛かったわ」
……そう。
エリスは俺に対して、ひとかけらの恋心すら持ち合わせていない。
彼女は、昔からフェルナンド一筋だった。
幼い頃、俺と一緒に遊んでいたフェルナンドを見かけて、一目惚れ。
それ以降、エリスの頭の中はフェルナンドだけ。
もちろんエリスの気持ちに応え、フェルナンドもエリスに心寄せてはいたが……。