華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~

「……私が憎いだろう。私への憎しみは計り知れないものがあるだろう。私を殺したくば今すぐこの首を絞めて殺せ。それでナディの気持ちが晴れるのなら私も本望だ」

「っ……」

「ナディだけじゃない、私は私に関わる人間を苦しめてしまったのだから」


「王子!!なりません!お止めください!今すぐその女から離れるのです!!!」

見るに耐えかねた門番が、そう声を荒げて牢の中へと入ろうとする。
だが俺は騎士に対し、叫ぶ。


「来るな!来たらお前の首を跳ねることになるぞ!!」


その言葉に門番は身体を跳ねらせ、中に入るのをためらった。

ナディは未だ憎しみの篭った瞳で私を睨んでいる。
その瞳を逸らさず、ナディを見つめた。

「ナディの好きなようにやってくれて構わない」


ナディの手に力が篭った。

首が圧迫されて、頭に血が行かなくなる。

呼吸も思うようにできず、目の前がだんだんと白く霞んでいく。

こんなにも死ぬことは辛いものだったか。


しかし俺を殺すことでその気持ちが晴れるのなら、いくらでも命を捧げよう。

それで皆が救われるのなら……。



意識が薄れかけた瞬間、首元に掛けられた手の力が緩み、離れた。

途端に血が頭に勢いよく上がり、人間の本能か酸素を身体に取り込もうとして、呼吸が荒くなる。


ナディは涙を流していた。
その表情はもう憎しみを含んだ表情ではなく、哀切の表情だった。
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