華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~

「どうした?いきなり」


「ずっと、不思議な世界にいたの。母が私を手招きしていて、でも行こうとすると他の誰かに呼ばれて、目の前が真っ暗になって……。そんなことをずっと繰り返していたの。でも最後、母は私に言ったわ。『生きて』って『幸せになって』って。で、気がついたら、ここにいた」


「ソフィア、それは……」


「……そういうことなんだと思う。多分、気にせずに母の元に行っていたら、私はそのまま永遠に眠り続けていたのかもしれない。けれど、母は私に生きてと言ってここに戻してくれた。私は、生きていてはいけないと思っていた。幸せになってはいけないと……。でも、少しは希望を持ってもいいということなの?」


王子は大きく頷く。


「当たり前だろう?ソフィアはなにも悪くないのに、今までさんざん苦しんできたじゃないか。たしかに君の父が仕出かしたことは許されないこと。でも、君がその罪をすべて引き継ぐ必要なんてない。それに君の父は己の愚行を、"死"を以て償った。本人は死んでもそう思ってはいないかもしれないが、でもこれ以上の償いはないだろう?」


「ずっと、抱えて生きていかなきゃと思っていたの。人々を悲しませ苦しませたのは変わらないから。いくら謝っても足りない。人々の気持ちを楽にするには、自分もこの命を捧げるのが正解だと思っていた。だから……」



「じゃあこれから俺と共に、希望ある国を作り上げていけばいい。君が王妃となり、今までにない、より良い国にしていけばいいだけだ。そうすれば必ず国民は君を認めてくれるだろう。だが、そのためにはまず君が笑わなければいけない。"幸福"とはなにかを知らなければならない」
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