華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~

レイモア王国のソフィア王女は、もういない。


国が危ないって分かっていたのに、なにもしなかった名ばかりの王女。
父を止めることすらできなかった娘。

命を賭けてでも止めようと行動すればできたはずなんだ。
国民を思えば、その一歩を踏み出せたはずなのに。

私はそれをしなかった。
ただただ、国が壊れていくのを傍観していただけだった。


本当はその罪を悔いて、自分からこの命を絶つべきなのだと思う。

この血を絶やすことが、私にできる最後の償いなのだと。


でもそれすらもできない弱虫な女なのだ。

そんな私をこの国が処刑してくれるというのだから、むしろ感謝をしなければいけない。


「お前は……」


王子の発した言葉は、最後が擦り切れた。

まるで絞り出すかのように吐いた言葉のように聞こえた。

そして眉尻を下げ、悲しそうな表情を浮かべる。


その表情に、唐突に胸が締めつけられた。

今まで弱さを含んだ王子の顔を見たことがなかったから。


「……なぜ」

"そんな顔をするのです?"


そう続けて言う前に、王子はくるりと背を私に向けるとその場を去る。

声を掛けようと一瞬思ったが、すぐに思い直した。


呼び止めたところでどうするの。

いまさら王子の気持ちを聞いたところで、なにが変わるわけでもないのに。


けれどその後ろ姿は、それまでとは全く違ったように見えた。

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