華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
「ソフィア・クリスフォース・レイモア。これから外へ出る。両手を前に出せ」
朝一番、朝食を摂る間もなく、ガチャリと牢の鍵が開けられ、鉄兜で顔の見えない騎士に言われる。
やはり処刑の日と自覚があるのか、珍しく私も早めに目が覚めていた。
私は言われた通り、両手を前に出す。
騎士は私の手首に重い鉄球の付いた手錠を回し、厳重に鍵を掛けると、同時に顔は布で覆われた。
そして引っ張られるように牢から出され、地上へと続く階段を上っていく。
地上へ近付いていくにつれて、ひんやりとした空気から、少しずつ暖かく乾燥した空気へと変化していき、やがて布越しから草木のみずみずしい香りが鼻を通った。
……ああ、外だ。
布越しでも分かる清々しい空気に、心なしか気持ちが軽くなる。
水浴びへと向かうときに何回も感じていたはずなのに、鳥の声も、風が木々の葉を擦る音も、まるで初めて聞いたかのように新鮮だった。
きっとこれが最後だから、そう感じるのかもしれない。
この布が取り払われたとき、一体私の目の前にはどんな光景が待ち受けているのだろう。
群衆の冷たい視線か、それとも……。
一歩一歩、しっかりと進みながら、私の気持ちはそのときの覚悟を決める。
なにを言われようとも、どんな汚い言葉を浴びせかけられようとも。
決して怯むことの無いよう、最期のときまで堂々としていよう。
確かに、私の国が全て悪い。
この国の平和を脅かす行動をした父が。
そして、その愚行を止められなかった私が。
その罪は、死を以て償う。
だから、恐れてはいけない。
受け入れなければいけない。
――そう。
私はレイモア国の王女。
そのプライドだけは、決して無くしてはならないのだ。