華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
反抗する間もなく連れていかれた先は、湯浴みのできる部屋だった。

そこにはやたらと広い湯船があって、すでに湯が張ってあり、もくもくと湯気が立っている。

有無も言わさずにボロボロの服を脱がされ、その湯船に浸からされた。

温かな湯の感触に、状況が掴めていないながらも、幾ばくかの幸福感を得る。

身を縮こまらせて掛けていた冷たい井戸水とは、比べ物にもならない。

思わず口から、はあ、と息が漏れてしまった。


しかし、ゆっくりと湯に浸かっているわけにはいかないようだ。

侍女たちは、ろくに洗わずベタベタになっている髪の毛を、何回もしつこく洗う。

そして私を湯から上がらせると、身体も隅々まで擦って、長年蓄積されていたであろう垢をしっかりと落とした。

その後、身体を上質な甘い花の香りのオイルを、たっぷりと肌に塗りつけられた。


……私の身になにが起こっているの?
なんでこんなに綺麗にされているのかしら。

女たちに聞いても、返答はなかった。
無言で淡々と支度を進めている。

戸惑いは増すばかりだ。
逃れようにも、これだけの人がいればすぐに捕まってしまうだろう。

仕方なく抵抗せずに身を委ねるしかなかった。
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