華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
呆れてため息が漏れる。
それは言葉にもなって、自然と口から出てしまった。
「理解に苦しむわ。このまま死なせてくれたらいいのに」
その言葉に王子の真面目な顔が、また緩む。
くくく、と声を押し殺しながら肩を震わせ笑う。
「なにを言っているんだ。こんなに面白い人間は早々いない、そう簡単に死なせてたまるか。生きて私を思う存分楽しませてくれ。……さ、行こう、神父が待っている」
有無も言わさず引きずられる様にして、部屋を出される。
部屋の外には鎧を身に付けた何人かの騎士が待機しており、私たちの後を追うようにして、それに続いた。
歩きながら掴まれた手を振りほどこうにも、力が強くて抜け出せない。
どうしよう。
本当に、私この男と結婚してしまうの?
目的の場所が近づくにつれて、不安が大きくなっていく。
それは今までに持ち合わせなかったもの。
ついさっきまで死ぬことだけを考えていた私が、突然、この王子と結婚し、これから先を生きなくてはならないことを、考えなくてはならなくなった。
同じ生きていくことにしても、牢で一生を終わらすより、格段に恐ろしいこと。