華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
――昔の記憶が蘇る。
母の記憶を。
父の行動に心痛め、ひっそりと泣きはらしていた母の姿を。
私は子供ながらに、ああはなりたくないと思った。
できれば結婚するなら、それがたとえ親の決めた相手だったとしても、どういった人間かを知ってから結婚したいと、ずっと思っていた。
それがどうだ。
私は今まさに、どんな人間かも分からない、権力だけはふんだんに持った相手と結婚させられようとしている。
私の身にこれからどんなことが待ち受けているのだろう。
母と同じ道を辿るの?
それとももっと苦しい道?
考えただけで、身震いしてしまう。
逃げたい。
でも逃げられない。
私の気持ちとは裏腹に、それは着々と近付いていた。