華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
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「―――おい。起きろ、ソフィア。もう朝だぞ、いつまで寝ているんだ」
鉄兜で顔の見えない騎士に起こされ、私の一日は始まる。
常に薄暗く、じめっとした牢の中。
窓は手の届かない高い位置に、申し訳ない程度に一つあるだけ。
その窓からは空の色以外なにも見えない。
光もほとんど入らない牢の中では、常に蝋燭の明かりが灯されていた。
かび臭い布団を押しのけて、上半身を起こす。
"朝"っていっても、ここ明るくないから時間の感覚が掴めないのよ、と心の中で突っ込む。
そう騎士から言われるのも毎日、そしてそう心の中で言い返すのも毎日のことだった。
「あー……、おはようございます。アーロンの騎士さま」
「朝飯だ。早く食え」
乱雑に鉄格子の間から手渡されたのは、かぴかぴに乾いたパンひとつだった。
『相変わらずの粗末な食事……』、と思いながらもそれを受け取ると、一旦ベッドの上に置いて、胸の前で手を組みアーロンの国王に感謝の祈りを捧げる。
何故って、これをしないと食べることができないから。
ここに来た当初、その祈りをせずにパンを口に運んだら、騎士が勢いよく牢の中に入って来て取り上げられてしまい、その後三日間、食事が出てこなかった。
幸い水だけはなんとか貰えたから良かったものの、四日目にパンが支給されたときは、どんなに固いパンでも美味しく感じられて、涙が出そうだった。
仮にも私は王女だった身分で、ましてや育ち盛りのかよわい女に対してとても酷い扱いだと思う。
……でも、私は捕らわれた身。
この国に無謀にも争いを仕掛けていった馬鹿な国王の血を引く人間だから、雑な扱いされても仕方ない。
殺されなかっただけマシだと、この国の人間は思っているのだろう。