華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
私はナディに、背中に手が届かないというジェスチャーを交えながら言う。
ナディは少しポカンとした顔で見ていたが、すぐにハッとして私の背へと回った。
「そうでした!着替えなくてはいけませんでした!申し訳ございません!!」
「いいのよ別に。むしろ早速私の願いを聞いてくれてありがとう、ナディ。助かるわ」
ナディの手によって背中の紐が解かれ、するっとドレスが床へと落ちた。
続けてコルセットも少し緩められ、一気に開放感が襲う。
「替えのドレスをお持ちしますね。少しお待ちいただけますか?」
ナディはそう言うと、コルセット姿の私に大きな布を身体を隠すように肩から掛け、脱いだドレスを手に取ると一旦部屋を出ていった。
部屋の中にひとりになり、途端大きなため息が口から洩れる。
思ってもみなかった現実。
戸惑いと不安と、色々な感情がごちゃ混ぜになって、ため息をこぼさずにはいられなかった。
……思えば、もっと抵抗できたはずなのに。
死ぬことなんて、怖いと思っていなかったはずだ。
なのに、結局王子の言葉と行動にあれよあれよと流され、今私はここにいる。
認めたくはないけれど、実はまだ私は"死ぬこと"に対して無意識に怖いと感じていたのかもしれない。
縋りついて請うたわけじゃないけど、結果的には噂のように、私は生きることを願い選択してしまったじゃないか。
「私も、まだまだ弱い人間だったのだわ」
そんな自分に情けなくて、またため息が漏れる。
色々な感情が籠った塊は、誰もいない空間に静かに消えた。