華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
「さて、そろそろお時間になります、ソフィア様」
椅子に座り考え込む私にナディは声を掛け、ハッと我に返った。
「え?もうそんな時間なの?」
「ええ。初日にから遅れては申し訳が立ちませんわ。お立ちになってくださいませ」
「……とても気が重いわ」
「側妃となられたからには、逃げることはできませんよ。さあ、参りましょう」
言葉は少しキツめだが、ナディの顔に淡く笑みが浮かぶ。
その表情に、少し嬉しくなった。
城の廊下へと出ると、やたらと静かでなぜか空気が重く感じた。
窓から外の光が入り明るく、清々しいと感じてもいいはずなのに、こんなにどんよりと思うのは、やはりこれからのことに対する不安の表れなのかもしれない。
ナディが前を歩き、そのあとを私はついていく。
途中、廊下の端で立つ見張りの騎士とすれ違ったが、その際に私に向けられた目は、とても冷たくどこかしら憎悪を感じられるものだった。
唇を噛みしめ、気づかないふりをしながら、それでも堂々とナディのあとをついて歩く。
弱さを見せてはいけない。
怖気ついたところは、決して。
耐えなきゃいけないんだ。
それが、生きることを選択した私への罰なのだから。
やがて、大きな扉の前で、ナディの足が止まる。
同じように立ち止まり、その扉を見上げて、ゴクリと息を呑んだ。
さあソフィア、第一の試練よ。
乗り切るのよ、平穏に、穏便に。
心の中で、自身に言い聞かせる。
―――そして、その扉は開かれた。