華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
向かいに座る女性は、その場で立つと淑やかに頭を軽く下げた。
そして優しく微笑む。
「お初にお目にかかりますわ、ソフィア様。私エリスと申します。側妃となる前は、エリス・グラナド・マディス。マディス家の次女として生を受けましたの。同じ立場ゆえ、仲良くして下さるととても嬉しいですわ」
やはり、向かいに座る女性はエリスだった。
煌びやかな深紅ドレスを優雅に着こなし、ウェーブのかかったブロンズの髪をふわりと纏め、そこに宝石がちりばめられた蝶の髪飾りをつけている。
丸く、くりっとした大きな瞳。
ばさりとした長い睫毛が、よりその大きな瞳を際ただせ、ドレスと同じ色をした潤んだ唇が艶やかに弧を描く。
感じられる雰囲気は、思ったものではなかった。
とても穏やかで、争いを好まなそうな人。
父の愛人を見ているからか、プライドの高い派手な女性を勝手にイメージしていたが、エリスはその限りではなかった。
構えていた心が、少し緩まる。
「さ、では楽しい食事会を始めようか」
挨拶を終え私が椅子に座るのを見届けた後、王子は手を軽く上げ、そう宣言しながらパンパンと2回叩く。
すると侍従たちがワインを手に持ち、ぞろぞろとやってきて、それぞれのグラスに注ぎ始めた。
ボトルからトクトク、とワインが注がれる音が部屋内に響く。
「では、この日に乾杯」
王子はグラスを上に掲げ、それに続き私とエリスも掲げ、そしてグラスに口を付けた。