華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
初めは、私の味覚がおかしいのか、と自分を疑った。
確かにここに来てからというもの、まったくといっていいほど豪勢な食事を口にしていない。
味覚が多少変わっていても間違いではないが、でもこれは違う。
誰が飲んでも、これは不味いと言うだろう。
……どうやら、この不味いワインは私のグラスだけに入っているようだ。
ワインのボトルはそれぞれ一本ずつで、パッと見ではラベルの違いはなかった。
つまり、私のグラスに注ぐワインボトルの中身だけが、不味いワインにすり替えられていたということ。
……誰がやったのかしら。
ナディの言いぶりでは、侍従たちが独断でやってもおかしくない。
この程度の嫌がらせを王子が命令するとは考えにくいから。
まあ、嫌がらせの中身としては、大したものではないし。
むしろこんな幼稚な嫌がらせで済んで良かったと、思わなきゃいけないかもしれない。
気を取り直して、食事に取り掛かる。
テーブルに所狭しと綺麗に盛り付けされた料理が置かれているが、どうやらそれはテーブルを華やかに魅せるための飾りのようで、実際に食べるぶんは既に目の前の皿に盛り付けられていた。
それは王子もエリスも同じだった。
見た目は誰のも変わらない。
……けど、なんとなく嫌な予感がする。
恐る恐るフォークとナイフを持ち、皿の上の肉をひと口大に切り、口に運んだ。
そして含んだ瞬間に、理解する。