華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~

……やっぱり。

見た目ジューシーでとても美味しそうなのに、冷えているわ、焼きすぎでパサパサしているわ、決して旨いと言える代物じゃない。



王子のフォークに刺さる肉は、肉汁が滴らんばかりの輝きを放っている。
皿に残された肉の切り口からは、薄くではあるが湯気もみられる。


それを見て、ハッキリとわかった。
料理でも、ちょっとした嫌がらせをされている。

肉だけしか口に運んではいないが、きっと私の前に置かれた料理は、なにかしらの手が加えられているのだろう。

なんて陳腐で陰険な嫌がらせ。
呆れて笑いしか出ない。

むしろこんなパサパサな肉を、見た目同じようにする方が手が掛かるんじゃないの?

本当、くだらない。

そしてなんだかんだ言っても、そんな嫌がらせされた料理とて、牢で食べていたものと比べたら、遥かに美味しいものだって、これを企てた人はわからなかったのね。


……つまり。

多少の食べづらさはあっても、普通に食べられちゃうってことよ。


今、私ができることといえば、平然となに食わぬ顔でこの料理を平らげることだけ。


よけいな波風は立てない。

こんな嫌がらせなんて、私には効かないんだと見せつけるしかない。
< 55 / 169 >

この作品をシェア

pagetop