華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
コンコン。
扉を叩く音が聞こえ、その音で現実に引き戻される。
「……?」
こんな闇深い時間に一体誰が?
深夜の訪問に、ドキリと心臓が跳ねた。
もしかしてナディかしら。
私がいつまでも起きないから、様子を見に部屋にやってきた?
そうは思いつつ私は少し身構え、扉を開けずに恐る恐る声を掛けた。
「……こんな遅くに、一体誰です?」
答えはすぐに返ってこない。
扉の向こうにいる人間がナディであれば、すぐに返事があるだろう。
そうでない、ということは……。
身体がより強張った。
ドクドクと心臓が早鐘を打つ。
「……誰なの?」
繰り返し、聞く。
答えなければ、この扉は絶対に開けない。
なにがあろうとも、絶対に。
やがて、小さく低い声が扉の向こうから聞こえた。