華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
その日は寝る直前まで、とても穏やかでそれでいて退屈な一日だった。
朝食、昼食とも部屋に運ばれひとりで摂る。
それ以外は特になにもするわけでもない、ただ部屋にいるだけ。
部屋の中を自由に歩き、十分過ぎる食事以外は、牢の中の生活とほぼ変わらない過ごし方。
特になにをするわけでもない、窓から外を眺めてぼおっとする。
でも、牢では外の景色を見ることすら叶わなかったから、ただただ外を眺めているだけでも気持ちは満たされていた。
太陽が昇り、ゆっくりと落ちていく際の空の色の変化。
姿は見えないが気持ちよさそうに歌いさえずる小鳥のささやき。
風に吹かれてゆったりと揺れる木々の葉。
すべてが新鮮に感じ、何時間見ていたって飽きることはない。
あっという間に夕食の時間となり、夕食だけは食堂でと言われ出向いたものの、そこに王子の姿はなかった。
使用人数人と、テーブルにところ狭しと料理が並べてあるだけ。
聞けば、普段は王子が命令しない限り、個々で食事をすることになっているらしい。
それは私にはありがたいことだった。
いちいち気を遣うのはゴメンだ。
いくら側妃となったからといって、必要以上に王子と接したくはない。
昨日の夜の王子の発言を聞いて、なおさらそう思う。
料理は、昨日とは打って変わって普通だった。
中途半端な嫌がらせは効かないと分かったからか、それとも……。
どちらにしても、別にいい。
これで食事の時間に身構える必要はなくなった。