華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
確かにエリスの表情を見ている限り、優しそうでおおらかな女性に見える。
しかしその中で、ほんの少しの違和感を持ってしまうのだ。
そもそも、どうして彼女は王子の側妃としてここへいるのだろうか。
王子の言う、ある理由とは?
きっとその理由が分からなければ、この妙な違和感の原因はわからないのだろう。
「気は乗らないけれど……、受けるしかないのよね」
私の小さな声での呟きに、ナディの視線が一瞬こちらへと向けられる。
しかし、すぐにまたこなたへと戻された。
……こうして、なんの変化もなく一日が終わろうとしていた。
あくびをひとつ付き、ベッドへと潜り込む。
湿気の含まないのが、これほどまでに心地の良いものだとは。
すぐに眠気はやってきた。
ウトウトと夢の世界へと旅立とうとしたとき、唐突に鳴り響く規則正しいノック音に、ハッと現実に引き戻された。
昨日よりはやや早いが、それでももう深い闇の広がる時間。
……嫌な予感がする。
扉の叩かれる音は、間隔を開けて繰り返し鳴らされた。
どうやら部屋の主である私が応答するまで、それは止むことはないようだ。
「……こんな遅くにどなた?」
仕方なく、扉の外にいる訪問者に声をかけた。
この嫌な予感、間違っていなければ多分、そこにいる人物は……。
「――私だ。この扉を開けてくれるか」
……やはり。
その声は、王子のものだった。