華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
その場でため息をつく。
今日は帰ってもらおうと思い、返す言葉を巡らせた。
大体にして、こんな遅い時間に来ること自体、どうかしている。
「もう遅い時間です。王子も休まれては?」
「いや、ソフィアの顔を見なければ休むことはできない。この扉を開けてくれないか」
「私もう眠くて……。明日ではいけませんの?」
「少しでいい、長居はしない。だから、君の顔を見せてくれ」
なんとかその場を去って貰おうとしたが、王子はめげない。
私が扉を開けるまで、そこから立ち去ることはないようだ。
「分かりました。少しお待ちくださいませ」
結局、折れる羽目になってしまった。
ベッドから離れ、ナイトドレスの上にガウンを羽織る。
そして部屋の明かりを灯すと、渋々扉を開けた。
「ああ、会いたかったよソフィア」
王子は私の顔を見るなり、表情が緩んだ。
まるで少年のような笑い顔に、少しだけトクリと胸が鳴った。
「さようでございますか……」
「なんだ、ソフィアはあまりうれしそうではないね」
「なぜそんな気持ちになるというのです?特別な感情などないというのに」
王子は『冷たい人だ』と冗談ぽく言いながら、ずかずかと部屋の中へと入ってくる。
あ!と気づいたときにはすでに遅し。
王子は何食わぬ顔で、部屋の椅子に腰かけてしまっていた。