華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
「で?エリスとなにがあった?」
王子は単刀直入に聞いた。
私は視線を横にずらして唇を噛みしめたまま、答えない。
……いや、答えないのではなく、答えたくなかった。
今の自分のドロドロとした心を持ったままで口を開いてしまったら、堰を切るように溢れ出てしまいそうだったから。
もう少し冷静になれる時間が欲しかった。
せめて今日だけは、どうしてもひとりでいたかったのに。
「答えろ。話さなければ何も始まらない」
「……なにもないわ」
「嘘だ。その顔を見れば誰でも分かる」
しんと静まり返った時間が流れる。
私は頑として理由を語らない。
やがて王子はすっと椅子から離れると、私の目の前に立ちはだかった。
目線を上げたときにはすでに王子がいて、逃れようにも行き場がない状態になっていた。
背の扉へ両手をつけ、私を覆うようにして王子は見下ろしている。
琥珀色のような金色と、無機質な鉱石を思わせるような銀色の瞳が、私を射抜くように見つめていた。