私がキスしたいのはあなたです。
着替え終わりプールに向かうと、もうみんな泳ぎ始めていた。
入念にストレッチを行ってから、自分のレーンへと入水する。
7月とはいえ、まだ水は冷たい。
明日は大会なので、アップを1kmで終わらせる。
小学6年の時5mしか泳げなかったり、中学では練習についていくがやっとだったりしていた私は、今ではすっかり人並みには速くなっていた。
人間は成長するものだ。と、口に出すのはこっぱずかしいことを考える。
今日は3km泳ぐか泳がないか程度でやめておいた。
明日疲れが出たら困るからだ。
プールからあがり、また入念にストレッチをしていると、瞳もプールからあがってきた。
「鈴夏、明日はいつも通りの種目出る?」
「うん、そのつもり。」
いつも通りの種目とは、100mと200mの平泳ぎだ。
「わたしも今度から平泳ぎに種目換えしようかなぁ。」
瞳は今クロールの選手だ。
「どしてよ。」
「んー、限界を感じてるからかな。」
私は言うほど水泳歴が長くないため、限界を感じるとかそういう気持ちがまだ分からない。
小川も限界を感じることがあるのだろうか………
「瞳がそれでいいならいいと思うけど、私は瞳のクロール好きだよ。」
「はは、鈴夏らしい返事だね。ありがとう。」