私がキスしたいのはあなたです。
開会式が終わると、みんなに見送られながら、選手控室に向かう。
私と同じ種目に出場するであろう選手たちを見ると、みんな速そうに見える。
待つこと15分くらいで自分の出番が来た。
合図とともにスタート台に立つと、緊張と喜びが混じった変な感情がするのは水泳を始めたころから変わらない。
飛び込んでからゴールするまでは、ほんとに一瞬だった。
その一緒に泳いだ組の中では2位、決勝に進むことはあと0.3秒のところで叶わなかった。
休憩所に戻ると、惜しかったねと一言だけ瞳に慰められた。
午後からの種目が自分の本命とはいえ、決勝に進めなかったのはやっぱり悔しかった。
「少しトイレに行ってくるね。」
瞳にそう告げて休憩所を出る。