月と地球と彼女と僕と。
「君の地元はどんな雪が降るの?」


食後の珈琲を飲み干す頃、アサコさんが聞いてきた。


「えっ、僕の地元?どんな雪かって……」


僕の地元は豪雪地帯。


正直、雪に対していいイメージはあまりない。


冬になると雪はどんどんどんとん降っては積もるし犬が喜んで駆け回る庭も全て雪で埋め尽くされる。


それに大量に降った雪を半日掛けて片付けてもその後、たったの一時間降ればまた元通りの一面の雪、雪、雪。


冬の間中、近所の人達も顔を合わせば雪の話。しかもその話のほとんどがどれもこれもが先行きが暗くなるものばかり。


だからアサコさんにどんな雪かって聞かれてもーーー


あっ、でも少しはあるか。


雪の好きなところ。


朝、起きてまだ誰も足跡を付けてない一面の雪を見るのは好きだな。雪の絨毯。レッドカーペットならぬホワイトカーペット。子供の頃なんて誰よりも先に足跡を付けるのが嬉しくて朝早くから歩いたっけ。


まるで雪の王様にでもなった気分で。なんて子供じみたことアサコさんには言いたくない。


「今度、行ってみたらどうですか?星も綺麗に見えますよ。後、温泉もあるし飯も旨いし。あっ、なんなら僕、案内しましょうか?」


大した深い意味もなく話の流れでそう言ったんだけどアサコさんは一瞬、泣きそうな顔をして、そしてまた一瞬で笑顔を貼り付けた。


「ありがとう。」


とだけ言って。









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