凪ぐ湖面のように
太田のおじいちゃん曰く、親の気持ちを考えると、二人だけの幸せ、ということが納得いかないらしい。

「でもですよ、親ならどんな形であれ、子供には不幸よりは幸せになって欲しいのでは?」

「それはそうだが」とやはり納得がいかないらしい。

「幸せというのは、皆に祝福され、認められ、初めて幸せなんじゃないか。二人さえ良かったら周りはどうでもいい、という考え方はどうなんだろうな……」

確かに周りを不幸にしてしまったら、二人は幸せにはなれないだろう。

しかし……幸せとは程遠いところにいる私は、幸せの定義がイマイチ分からない。だから、答えようがない。

「幸せって、簡単そうで簡単に手に入らないものなのですね?」

小さな私の呟きを聞きながら、太田のおじいちゃんが言う。

「ワシはな、まず、自分自身を幸せにできない奴は真に幸せになれないと思うんだよ。幸せだと思える奴がパートナーを幸せにし、その二人が周りも幸せにする」

「だからな……」とアイとレンの頭を撫でながら、穏やかに言葉を紡ぐ。
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