凪ぐ湖面のように
その代わりと言ってはなんだが、私はクリスマス一色の街を楽しんでいた。
両親が海外に行くまでは、毎年、一緒に過ごした楽しい記憶があるからだ。
だから未だに、クリスマス・ソングを聴くだけでワクワクしたり、イルミネーションを見るだけでドキドキしたり……それは一人になった今も変わらない。
*
「本当、この二週間大変だった」
今日は定休日。湖陽さんと二人、いつもの席で湖を見ながらコーヒーを啜る。
店の中もクリスマスモードで、いつもの落ち着いた雰囲気に華やかさが加わり、ここでも私の気持ちは浮き立っていた。
「お疲れ様でした。少しは落ち着きましたか?」
「一週間目よりはね」
「でも」と湖陽さんが首を横に振る。
「まだ岬は来ない方がいい」
「どうして?」と訊ねかけた時、チリリーンとドアベルが鳴る。
しまった、と湖陽さんが顔を顰める。どうやら鍵を掛けていなかったようだ。
サッと立ち上がると、ドアに向かって「すみません、今日は定休日で……」と言ったその目が見開かれる。
「――美希……」
両親が海外に行くまでは、毎年、一緒に過ごした楽しい記憶があるからだ。
だから未だに、クリスマス・ソングを聴くだけでワクワクしたり、イルミネーションを見るだけでドキドキしたり……それは一人になった今も変わらない。
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「本当、この二週間大変だった」
今日は定休日。湖陽さんと二人、いつもの席で湖を見ながらコーヒーを啜る。
店の中もクリスマスモードで、いつもの落ち着いた雰囲気に華やかさが加わり、ここでも私の気持ちは浮き立っていた。
「お疲れ様でした。少しは落ち着きましたか?」
「一週間目よりはね」
「でも」と湖陽さんが首を横に振る。
「まだ岬は来ない方がいい」
「どうして?」と訊ねかけた時、チリリーンとドアベルが鳴る。
しまった、と湖陽さんが顔を顰める。どうやら鍵を掛けていなかったようだ。
サッと立ち上がると、ドアに向かって「すみません、今日は定休日で……」と言ったその目が見開かれる。
「――美希……」