凪ぐ湖面のように
だが、二日過ぎても条件を満たす場所は見つからなかった。

「パパとママの所へ行っちゃおうかな」

何かにつけて『こっちにおいで』と誘う両親は、『貴女の仕事、パソコンさえあったらどこででもできるじゃない』と言う。

それはそうだが、どうしてだか日本から離れたくなかった。

「ああーん、もう!」

髪を掻き毟り、これ以上部屋に居ると腐りそうだと重い腰を上げ、街に出る。

先日以上にクリスマスムード一色の街は、まるで、ひっくり返ったおもちゃ箱のように、楽しげな色に包まれていた。

「でも、この時期のロンリーは……やっぱり淋しいな」

引っ越し云々は別として、取り敢えずクリスマスは家族と過ごすか。
そう決心すると、スーッと気持ちが楽になる。

「そうだ、せっかく来たんだからパパとママにプレゼントを買おう!」

今思えば、この時期これも楽しみの一つだった。プレゼントを貰うのも嬉しかったが、二人の喜ぶ顔を思い描きながら二人へのプレゼントを選ぶ時間は至福の時だった。

いつかは両親以外の愛する人のために、そんな時間を使いたいと思っていたが……もう一生そんな時間はないだろう。
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